ダイカストにおいてはプランジャー挙動の制御は製品品質に対し非常に重要なパラメータです。解析におけるプランジャー挙動は、ビスケット部の溶湯に充填速度を与えることで、それを模擬します。
図1はプランジャーの速度履歴です。この速度を図2のビスケット部の溶湯に与えることで充填します。スリーブやプランジャーをモデル化しなくとも溶湯充填の挙動を再現することが可能であり、一般的なダイカスト解析においては、この手法が用いられています。ProCASTでもこれと同等の解析は可能ですが、高精度な解析結果を求める場合はスリーブとプランジャーをモデル化して解析することを推奨しています。
図3は図2と同じモデルに対し、スリーブとプランジャーをモデル化して解析です。さて実際にプランジャーをモデル化したものと、モデル化していないもので、どのように解析結果に差が生まれるのでしょうか。いくつか例を挙げてみます。
溶湯が75%程充填された時点での温度状態です。
温度状態に明らかな違いがみられると思います。これはプランジャーを考慮することで、スリーブに充填された時点からの熱解析が可能となり、より実現象に近い温度状態を得ることができたことが理由です。
溶湯が空気にさらされることは酸化被膜発生の原因となります。スリーブをモデル化することで、スリーブ内で溶湯空気にさらされている状態を再現し、欠陥予測の信頼性を高めます。そして、酸化被膜をいかに、スリーブ内に残すかというピストン挙動のコントロールは、プランジャーモデル無しでは実施できません。
他にもいろいろとプランジャーを考慮することによる恩恵はあるのですが、今回はここまでとします。
鉄鋼材料メーカーの製鋼鋳造プロセス研究技術者を経て2000年日本イーエスアイ株式会社入社.鋳造,溶接といった熱加工プロセス,材料技術に従事.