ここまでは機能紹介が多かったので、少し趣向を変えてみました。
ProCASTを使うことで、どのように役立ったのか、という具体的な事例をご紹介します。
これ(図1)が今回ご紹介する製品です。
図2が初期方案、図3が解析結果から導き出した検討後の方案です。
解析により検討した結果、Chillや押し湯が追加されました。なぜこういった変更になったのか、解析結果を見ると明確な違いがあります。
初期方案においては、引け巣が製品全体に確認できます(図4)。そのため、押し湯の位置を変更し、製品内部でホットスポットを作らないよう、冷却速度と最終凝固位置のコントロールを実施しました。
その結果、図5のように、製品内部に欠陥を残さない設計を検討することができました。(製品中央に見える引け巣は、押し湯部のものです)。このように、試作をすることなく自由に方案を検討できることは、解析の大きな強みです。
しかし実は、この設計はここで終わりではありませんでした。
ProCASTの特長の一つである応力解析を実施した結果、この方案にはまだ大きな問題があることがわかりました。
上の図6は脱型し、方案部分を除去した後の製品の応力変形を拡大したものです。
左側が変形前、右側が変形後となります。色は変形量を示しています。
ご覧の通り、製品を開く方向に大きく変形することがわかります。この変形の対策のため再度の方案変更が必要となりました。
導き出された方案がこちら。製品を寝かせた形での成形に変更されました。
図7が注湯中の温度履歴、図8は固相率分布の推移で、凝固過程を解析しています。
この方案に行く着くまでに、さらに多くのトライ&エラーがあったことは想像に難くありませんが、最終的に内部欠陥が無く、かつ残留応力変形が抑えられた方案を検討することができたとのことです。
この事例では、特に応力変形の抑制をターゲットとした方案変更が大規模となりました。試作レスでここまでの成果を上げたということで、鋳造解析の効果が顕著に表れた事例となります。
鉄鋼材料メーカーの製鋼鋳造プロセス研究技術者を経て2000年日本イーエスアイ株式会社入社.鋳造,溶接といった熱加工プロセス,材料技術に従事.