MBS(Multi Body System)ライブラリのエレメントを使用したモデル化の事例を紹介が続きます。やはり、モデルの動きが視覚的にわかりやすいので偏り気味になってしまいますが、MBSを用いない事例についても順次挙げていこうと考えています。
今回、題材としたのは振動式のコンベアです。通常コンベアと言えば、ベルトコンベアをイメージされる事が多いかと思いますが、こちらは天板に振動を加えることで搬送物を移動させる機構となっています。ベルトコンベアですと端部で裏返って反対側に戻っていく必要があり、ベルトはゴムのように変形する必要があります。これに対して、振動式コンベアの天板は変形させる必要がないので鋼板等で作成することが出来るため、高温なもの、磨耗性・腐食の高いものなど幅広い搬送物に対応することが可能です。これをモデル化したのが左下の図です。
さて、下に示したダイアログビューで各部位ごとに四角で囲っています。下から土台支持部-弾性体(赤枠)、ベース(青枠)、振動部(水枠)、コンベア支持部-弾性体(紫枠)及びコンベアと搬送物(緑枠)で構成されています。
ここで、振動部はunbalance1/2でモデル化されaxis1/2を介してbaseBodyに接続されています。トップ画像では回転している青と紫の球体がunbalance1/2に、また、回転中心となっているのがaxis1/2に対応しており、unbalance1/2が回転をすればbaseBodyにモーメントが生じるので、これが土台及びコンベア支持部の弾性体を変形させる力となります。この弾性体が力の変動により伸縮する運動を行うことでコンベアに振動を発生させ、これが特定の条件内であれば搬送物が一定方向に移動するという仕組みです。上図右はコンベアに乗せた搬送物(緑枠内のbulk)が移動する時刻歴を表示しています。始動直後は目的の方向と逆に進んでいますが、2.5秒辺りからは正しく移動すなわち搬送されている事が確認できます。
これら、axis1/2の位置, unbalance1/2の質量や回転速度, 支持部の剛性等が設計パラメータになってくる訳ですが、この様なモデルを用いる事で適切なパラメータの組み合わせを見つけることが可能になります。そうでないと前述の2.5秒までのように逆方向へ進ませる製品になってしまう可能性も考えられます。
MBDを用いることで、事前の検討が容易で試作段階での手戻りを無くすことも可能であるという事例でした。
2004年、日本イーエスアイ(株)入社。自動車をはじめ各種産業分野のCAE受託解析業務及びVPSの技術サポートに従事。2016年からSimulationX及びVPSとの連成解析関連の受託解析業務、サポート、プリセールスエンジニアとして従事。