CEM Oneでは、Spherical Wave Expansion(球面波展開)を使ってアンテナなど通信デバイスの測定やシミュレーションで得られた近傍界・遠方界データから、組み込みシミュレーションで利用可能な波源を作成する事が出来ます。この機能によって、アンテナの詳細形状、寸法、材料などの情報が無くてもデバイスを組み込んだ全体モデルの放射パターン解析を行う事が可能となります。また細かなアンテナ形状のモデル化回避が可能となるため全体メッシュ数の削減にもつながり、計算負荷の低減にも寄与します。
球面モードの合成で波源を近似(放射を再現)します。
下記のようにシミュレーションまたは測定値から定義可能です。
シミュレーション:アンテナなど放射体解析と同時計算
測定(または他ツールのシミュレーション結果):放射体の近傍界または遠方界測定値から計算
近傍界:放射源を囲む直行座標位置(X、Y、Z)における電界、磁界のRealとImaginary(または振幅値と位相値)
必要データ
測定値の代わりにシミュレーションの遠方界結果データを使用してSWEソースを作成し、遠方界の再現性を確認しました。
サンプルモデル(パッチアンテナ:8.2GHz)
遠方界データ取得用観測面はθ方向が0~180°まで10°間隔のカーブ出力設定面をφ方向0~350°まで10°間隔で配置し、全ての座標における電界θ、φ成分のRealとImaginaryを取得(測定データの代替)
シミュレーションで得られた遠方界結果から作成した、SWE生成用テキストファイル例
生成されたSWEソースの遠方界と元データとの比較
上記遠方界グラフから、SWEによって元のパッチアンテナの遠方界をよく再現出来ている事が確認出来ます。
今回のサンプルパッチアンテナの遠方界形状は比較的スムーズな形(球に近い形状)で、SWE生成に使用した遠方電界データはθ、φ方向それぞれ10°間隔で取得しましたが、細かい角度間隔でデータを取得する事により複雑な遠方界形状にも対応可能となっております。
この方法で作成した波源は「樹脂板形状とミリ波の反射シミュレーション」で紹介した3D3Dカップリング機能と同様にFDTDやモーメント法ソルバーのソース(放射源)として使用する事が出来るため、複雑な3D筐体と組み合わせて組み込み状態での放射パターンシミュレーションに適用する事が出来ます。
電気機器メーカーにて電磁接触器の設計に従事し、電磁界解析の経験を積む。1999年より現在まで日本イーエスアイ(株)にて電磁波解析を担当し、主に自動車関連メーカーの解析をサポート。