今回はPAM-FORMにおけるThermal-Mechanicsの連成計算についてご説明します。
PAM-FORMでは、Plyの機械的変形を解くのに加え、Ply内部の熱伝導、Ply間の熱伝達、さらに、Ply-金型間の熱伝達も解くことが可能となっています。このMechanics計算とThermal計算は同時進行で行われ、各々の物理状態を自動的にリンクしながら全体の計算が進行していきます。
材料インプットとして温度に依存した機械特性値を定義しておけば、Plyの温度変化にリンクしながら成形中の材料特性をアップデートすることが可能となっています。
下図は、熱可塑プリプレグ(オーガニックシート)8Plyのスタンピング工法にThermal-Mechanics計算を適用した事例です。
成形条件は、材料の投入温度を300℃、金型温度を200℃一定、金型-Ply接触開始から下死点までのプロセスタイム250msecを想定しています。コンターは下死点到達時点の第一層(金型接触層)と第二層(内部層)の温度分布を示しています。
凹凸を含む製品形状であるので、型はPlyシート全体でなく、部分的に接触を開始することとなり、先に接触した個所より温度低下が始まるため、下死点到達時点では製品内に温度分布が生じていることが確認できます。また、第一層は型から直接冷却されるのに対し、第二層は型と第一層を介して冷却されるため、若干温度低下が遅れていることが確認できると思います。
以上より、Thermal-Mechanics計算は、熱可塑プリプレグのように、材料特性の温度依存性・ひずみ速度依存性が高く、成形中の固化が許されない成形条件を検証する際に有効な計算方法であるといえます。
2008年 日本イーエスアイ株式会社 入社。薄板金属成形解析業務を担当したのち、現在は樹脂複合材成形解析を兼務。製造業各社に向けた技術サポート、コンサルティング業務に従事。