ProCAST 導入事例 魚岸精機工業株式会社
魚岸精機工業株式会社の事例を紹介します。
鋳造解析ソリューション
使用ソフト:ProCAST
魚岸精機工業株式会社、専務取締役 魚岸成光 氏、桐原芳親 氏、定作由佳 氏に、ProCASTを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。
魚岸精機工業について
魚岸精機は、富山県射水市のダイカスト金型メーカーです。主要顧客は自動車業界の部品鋳造メーカーであり、昭和21年の創業 以来、高い技術と先進設備を武器に多くの顧客の信頼を得ている、「キラリと光る中小企業」 です。年商12億円、従業員数56名(日本国内のみ、非正規含む)、富山県の本社工場のほか、タイにも生産拠点 があります。
(※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。)
1. キラリと光る、日本の金型企業
- 魚岸精機ではどんな製品を作っているのですか。
弊社はダイカスト鋳造金型の専業メーカーです。弊社のお客様、部品鋳造メーカーから提供された図面をもとに、相手先の工場で使う鋳造金型を製造します。概要は次のとおりです。
項目 | 内容 | 備考 |
金型の製造方法 | 切削、放電 | ±100分の1 mmの精度 |
製品のサイズ | 平均500トン程度(鋳造機サイズ) | 最小250トン~最大1650トン(鋳造機サイズ) |
生産量 | 年間、約100型(メンテナンス含まず) | 月7~8型(メンテナンス含まず) |
魚岸精機の金型から作られる部品の例
新しい技術や設備は積極的に導入しています。15年前には、ドイツ製の同時5軸加工機を日本で最初に導入しました。今回の鋳造解析ソフトウエアProCASTの導入も、こうした設備投資の一環です。
2. 鋳造金型の最適な方案づくりのためにProCASTを活用
- 現在、魚岸精機ではProCASTをどう活用していますか。
ProCASTは、鋳造金型の「ゲート」「オーバーフロー」等の方案を顧客に提案するために活用しています。
ダイキャスト鋳造用金型の彫り込み部分は、「部品本体形状部」「ゲート、オーバーフローの方案部」に分かれます。このうち「部品本体形状部」は、提供される図面やモデルの通り造るものであり、その形状について弊社が形状変更を要求することは殆どありません。
ProCASTを使用してダイカスト製造プロセスを最適化
一方、鋳造のとき液体金属(湯)の通り道となる「ゲート、オーバーフローの方案部」については、本体部品の形状と無関係の為、設計に自由度があります。そして、その位置、形状は、金型の段階で完全に決定されます。この部分は、金型メーカーがその方案、つまり最適な位置、形状、サイズを提案できます。
では、その「最適な方案」をどう考え出すか。弊社に鋳造設備はないので、「やってみて確かめる」わけにはいきません。そこでシミュレーションソフトを使い、仮想空間の中でゲートやオーバーフローを様々な方案で設定し、湯の流れ方、全体への行き渡り方、固まり方をシミュレーションしながら、最適解を見つけ、それを顧客に提案します。
ProCASTのシミュレーションは、魚岸精機の提案力向上に役立っています。
ダイカストのスリーブからの充填解析結果
3.「技術だけでは生き残っていけない」
- ProCAST導入前の課題について教えてください。
大きくは「縮小する市場の中で、いかに付加価値を高め、生き残っていくか」ということが課題でした。
私たちは、自社の金型品質に絶対の自信を持っております。以前は「ウチの金型の良さは使ってもらえば、必ずわかる」という考えのもと、品質向上に没頭していました。
この品質第一の思想はもちろん重要です。しかし「使ってもらえればわかる」というのは、同時に「使ってもらえない限り、理解されない」ということでもあります。
右肩上がりが期待できない業況の中で、自ら情報発信をし、新規開拓する必要がある。平たくいうと今は、まず「目立って、知ってもらうこと」「品質以外の価値でも他社と差別化をすること」が重要なのです。
この「付加価値による差別化」を実現するために、2015年に、UPDOというプロジェクトを立ち上げました。ProCASTの導入も大きくは、このUPDOプロジェクトの一環です。
4. UPDOプロジェクトとは?
- UPDOの概要と、その中でのProCASTの位置づけについて教えてください。
UPDOは、Uogishi Product Design Offeringの略です。「不良率低減」「製品/方案・歩留り向上」「方案変更の減少」を通じて、お客様のコスト削減を実現するためのプロジェクトです。
UPDO専用ホームページを作り、キャラクタを使ったブログやYouTubeも立ち上げ、展示会でもUPDOを前面に押し出しています。まず、何が何でも目立ち、振り向いてもらう。しかし目立つだけで中身が無いのでは受注につながりません。UPDOに関心を持ってくださった顧客にどんな付加価値を提供できるか、そこが勝負です。
その付加価値の一つが「ProCASTによるシミュレーション」です。金型を造る前に、ProCASTを使って、「この方案なら、湯はこのように流れ、このように凝固する」というシミュレーションを重ねます。そして「この方案には、こういうメリットがあるが、一方でこういうデメリットもある」というように、複数の方案について長所と短所の両方を伝え、顧客の判断を仰ぎます。
方案は数値を添えて提案します。「私の経験とカンではこうです。必ず成功させるので信じてください」では通らない。百歩譲って、目の前の担当者が、熱い語りで納得してくれたとしても、その後、担当者が上司を説得できない。担当者の社内プレゼンを支援するためにも、数値に基づくシミュレーション資料を添える必要があるのです。
5. 顧客の不良品率を劇的に改善
-UPDOプロジェクトの成果はいかがですか。
UPDOプロジェクトを開始して4年目、すでに「年間の新規顧客数が従来の2倍に増える」という成果が上がっています。 また自社の業績アップだけでなく、「顧客の不良品率ダウン」という点でも次々に効果が上がっています。その一例を紹介すると、あるとき、展示会でUPDOに興味を持って相談に来られた会社がありました。「現在、不良品率が12%もある。これを何とかできないか?」というのです。 これに対し、ProCASTの解析により「不良品率改善のための新しい方案」「将来、起こりうるトラブルの予想」、「そのトラブルが生じた場合の対応策」などを考え、その情報と共に、新たな金型を提供しました。 その後、不良品率は12%から0.2%に大幅減少。つまり従来1000個作って120個の不良品が出ていたのが、わずか2個に減少したということです。その会社からは非常に感謝されました。これはProCAST解析を軸にしたUPDO活動が、最も成果を出した事例です。 |
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6. ProCASTを選んだ理由
-UPDOプロジェクトで使う鋳造解析ソフトウエアとして、数ある製品の中から、特にProCASTを選んだ理由は何ですか。
最大の理由は「性能(計算能力)の高さ」です。 鋳造シミュレーションの計算方法には、大きく有限要素法と有限差分法の2種類があります。計算精度は明らかに有限要素法が優れています。 |
魚岸精機工業株式会社 桐原 芳親 氏 |
UPDOプロジェクトでは、必ず有限要素法の解析システムを使いたいと思いました。もちろん性能だけでなく価格も重要です。「高性能と価格のバランスが良くとれた」製品を求めました。 | |
その後、ProCASTなど各種製品の情報を集め、ソフトウエアを借りて実際のワークでシミュレーションするなどし、相互比較しました。その結果、ProCASTが求める要件を最も良く満たしていたので、これを導入しました。その後、ProCASTはUPDOプロジェクトを通じて大活躍し、ついには先に述べた劇的な成果を上げるに到りました。 魚岸精機では、今後とも高品質の金型、高付加価値の情報を顧客に提供することで、さらに企業価値を高めていく所存です。イーエスアイには、そんな弊社の取り組みを優れた技術、製品、サポートを通じて下支えいただくことを希望します。これからもよろしくお願いします。 |
魚岸精機工業株式会社
専務取締役 魚岸 成光 氏 |