VA One導入事例 Bombardier社

Vibro-Acoustics
Ground Transportation

Bombardier社は、鉄道車両の構造伝播音のシミュレーションにVA Oneを活用しました。

全周波数帯域向け統合振動音響シミュレーション
使用ソフト:VA One

 

PAM-COMFORTを活用したシート仮想設計


課題

  • 二階車両での騒音、振動の伝播状況のシミュレーション

  • 浮床構造での騒音、振動の予測

 

評価

「有限要素法と統計的エネルギー解析を混合して用いるやり方は、優れた音響モデリング技術であり、将来は大規模構造物の音響計算、解析の標準的な手法となるでしょう。有限要素法と統計的エネルギー解析を個別に使ったのでは解くことができなかった問題が、この手法により、解けるようになりました」 Bombardier Transportation 社、騒音・振動担当シニアスペシャリスト、Ulf Orrenius 氏

 

効果

  • ソフトウエア間でのデータ管理負担の軽減。それによる振動・音響モデル設定の簡略化

  • 広い周波数スペクトルでの振動・音響シミュレーションにおける優れた手法の確立

 

 

Bombardier Transportationは、鉄道設備の世界的な大手企業として、旅客鉄道車両や輸送設備、機関車、ボギー車、推進制御システム、鉄道管理ソリューションなどを製造しています。車両内の騒音、振動の低減を通じ乗客や乗員の快適性を確保することを保証するには、それら騒音、振動の伝搬経路を熟知している必要があります。そう考えたBombardier Transportationでは、振動・音響解析ソフトウエアとしてVA Oneを採用しました。

 

 

 

 

車両内部の騒音制御における課題 : 騒音、振動の主要伝達経路の特定

鉄道構造物における騒音、振動の伝達経路のシミュレーションには、従来、有限要素法および統計的エネルギー解析法が個別に用いられていました。しかし有限要素法では、大規模構造物の中高周波数応答のモデルが作成できないという問題がしばしば発生し、一方、統計的エネルギー解析の方も、計算効率の高さゆえに高周波数応答のモデル作成には適しているという長所を持つものの、複雑な接合部やサブシステムの詳細モデル作成には不向きであるという欠点があります。有限要素法も統計的エネルギー解析も、どちらも適用不可能な周波数帯域があまりにも広く、不都合でした。また、周波数範囲ごとに異なる方式を用いることは時間の浪費であり、モデル管理の困難を招くおそれがありました。

 

 VA Oneにより、広い周波数帯域での正確な予測が実現

2階建て車両端部のHybrid FE-SEAモデルに
組み込まれたFE法およびSEA法の
コンポーネント

列車の床は、空中伝播騒音および固体伝播音(および振動)の遮断に大きな役割を担っており、特に浮床は、鉄道車両内での騒音、振動を低減するためによく活用されます。Bombardierでは、2階建て列車の浮床による振動低減のモデル化を集中的に行い、その際、VA One の「有限要素法と統計的エネルギー解析とのハイブリッドモジュール」を活用しました。このモジュールでは、一度の解析で有限要素法と統計的エネルギー解析を厳密に連成させることができるため、広い周波数帯域での予測精度の向上と計算時間の短縮が実現しました。

この作業を通じ、VA One が浮床設計の振動伝達特性を正確に予測できることが実証され、それにより浮床構造の振動伝達特性を支配する主要な物理パラメータを特定することと、様々な振動絶縁設計を評価することとが実現できました。続いてVA Oneによる列車の詳細なモデル作成を実施し、その結果、浮床構造の解析を通じての物理的な伝播経路に関する知見を得ることに成功し、騒音制御法の新たな設計への道を開きました。最後に、VA One の「有限要素法と統計的エネルギー解析のハイブリッドモジュール」を使って、減衰が大きな床板の放射効率の解析を実施し、解析結果が実際の試験データとほぼ一致することを確認しました。

 

 

 共同プロジェクトの成果

VA One の「有限要素法と統計的エネルギー解析のハイブリッドモデリング」により予測結果が改善された理由は次のとおりです。

  • 標準の統計的エネルギー解析モデルに含まれる、複雑な接合部および要素の詳細な表現が可能になった。

  • シミュレーションできる周波数範囲が広くなった。

  • 大規模構造物のモデル設計で使用が可能になった。

  • 任意の加振/ 減衰を受ける複雑な構造物の放射音響パワーの計算が可能になった。

今回のプロジェクトにおいて、Bombardier Transportationは、VA Oneによるシミュレーション結果と、実際の測定結果とを比較し、有限要素法と統計的エネルギー解析とのハイブリッドモデリング手法の有効性を明らかにしました。設計の初期段階において最適な設計ソリューションを追加費用なしに得ることができるVA Oneは、同社の航空宇宙部門が製造する航空機用パネルの騒音制御対策の評価にも使用されています。