前回、連続繊維は繊維0/90°方向は剛性が高いのに対し、繊維45°方向は極端に剛性が低くなることをお話ししました。
この特性により、0/90°方向は変形せず、繊維45°方向に変形しやすくなります。つまり、繊維配向角度が変化する”面内せん断変形”が、連続繊維賦形における主な変形モードとなります。
このような面内せん断特性を得るための試験は、
の2種類が用いられることが知られております。
ピクチャーフレームテストは、四隅に逃げを設けた正方形基材の4辺を金属のアームでクランプします。
アーム間は同一支点により回転可能であるため、一方の支点を固定しながら他方の支点を移動することにより、アームは菱形に変形していきます。
その結果、基材の繊維長を変化させることなく、直接的に純せん断変形を得ることができる試験方法です。
バイアスエクステンションは、一般的な引張試験機を用いた±45°方向の引張試験です。
基材中央部のみ純せん断状態(A)、チャック部近傍はゼロ変形状態(C)、中央部とチャック部の間は中間の変形状態(B)を発現することにより、間接的に純せん断変形を得ることができる試験方法です。
PAM-FORMには、両試験で測定される荷重-変位カーブを理論式により変換し、せん断応力-ひずみカーブを得るコンバーター Picture frame/Bias extension wizard が備えられております。
速度と温度を変えた複数試験結果を入力することも可能で、自動的に温度・ひずみ速度依存のせん断応力-ひずみカーブテーブルが作成されます。
また、ピクチャーフレームテストの引張方向を正せん断、圧縮方向を負せん断として入力することで、正負非対称性を持ったせん断応力-ひずみカーブを得ることができます。
これは、NCFのように非対称なステッチングラインがもたらす材料の非対称性を表現するためです。
以上により、連続繊維賦形で重要な面せん断特性を精度良くソフトウエアへ入力することが可能です。
2008年 日本イーエスアイ株式会社 入社。薄板金属成形解析業務を担当したのち、現在は樹脂複合材成形解析を兼務。製造業各社に向けた技術サポート、コンサルティング業務に従事。