前回の最後にご説明しましたように,ProCASTでは下図のイメージのように,予熱,鋳造から最終形状までのプロセス変化を考慮して計算できます.
製品,金型の形状や応力に着目した際に,プロセスに応じた温度変化だけではなく,製品の拘束条件などの変化を条件として考慮する必要があり,より具体的には型開き前は製品が鋳型に接して拘束されているため変形量としてはあまり大きく現れませんが,型開き後は型による拘束がなくなりますので,内部応力が解放されて変形が大きくなる,といったことが計算により再現されなければなりません.
ProCASTでは型開き前後の鋳物,鋳型の接触,さらには鋳物部分においても方案部分切断によるモデル形状変化に対応しています.
下図は型開き前後の主応力分布を示したもので,左側の型開き前,つまり鋳型内で拘束された状態では内部に比較的高い引張応力が発生していますが,右側の型開き後では鋳型による拘束がなくなり,内部応力が解放されて相対的に応力分布が低くなっているのがわかります.
下図はゲート方案形状を削除した最終製品形状での応力分布です.どちらも全体的な応力分布に大きな違いは見られません.これは鋳型解放して室温になった状態から下部のゲート部分を削除しても製品本体の残留応力には大きな影響はないことを示していますが,ただし図下部のゲート接続部付近やシリンダボア内面の応力分布はゲート形状の有無により多少応力分布の変化が見られます.
鋳込み中の割れや最終変形が生じる原因究明のために,鋳造中の応力変形解析が必要なことも多くありますが,実際に要求されるのは最終的な製品としての形状や残留応力であることも多く,そのためには鋳造時の評価だけではなく,プロセス全体を通した計算,評価が可能であることが重要で,そのためにはプロセス中の条件変化や形状変化に対応できることが必要となります.
鉄鋼材料メーカーの製鋼鋳造プロセス研究技術者を経て2000年日本イーエスアイ株式会社入社.鋳造,溶接といった熱加工プロセス,材料技術に従事.