ここまでProCASTによる熱応力解析の基礎知識として弾塑性解析における熱の影響や凝固に伴う挙動,材料物性値についてご説明してきました.
これらを基礎として実際の解析事例についてご紹介します.
これは二輪車のスイングアーム,二輪車の車体とタイヤをつなぐ部分になります.タイヤを挟み込んで取り付けることになりますので,このアームの間隔が精度よく製造されなければなりません.しかし鋳造製品は熱応力によって変形しますので,その変形を予測して規定の間隔で製造する必要があります.
この製品ではアーム間の間隔を237.0±0.2mmにコントロールする必要があります.
最初の方案にてProCASTによる変形予測を行ったところ,236.11mmと狙いよりもやや間隔が狭すぎる結果となりました.
しかし製品形状を変更することはできませんので,ゲート方案部分を変更することで再度検討しましたところ,アーム間隔が236.61mmとまだ狙い値±0.2mmに対して0.19mm狭いという結果でした.
これを踏まえて最終的にさらに方案改善を行った結果,以下のように237.0±0.2mmを満足する結果となったという事例です.
この事例では単なる冷却凝固中の熱応力および変形だけではなく,脱型冷却さらにはゲート方案を削除した最終製品形状での評価が必要であり,ProCASTでは下図のイメージのように,金型予熱,鋳造から最終形状までのプロセスを形状変化を考慮して計算できる仕組みとなっていますので,このような予測に活用することができます.
鉄鋼材料メーカーの製鋼鋳造プロセス研究技術者を経て2000年日本イーエスアイ株式会社入社.鋳造,溶接といった熱加工プロセス,材料技術に従事.